お産は、女性において一生の中で一番大きなイベントともいえます。また、何度も数多く体験することではありません。そのため、生まれてくる赤ちゃんと妊婦様自身、また赤ちゃんの誕生を心待ちにしているご家族にとりましてより良いものでありますよう、当院スタッフ一同、お手伝いをいたします。
分娩はすべて助産師と医師で介助いたします
当クリニックでは、お産の介助は助産師が主体となり行いますが、すべてのお産に医師も介助いたします。これは、開業以来から守り続けている事で、すべての妊婦様のお産の経過を常に共感したいと考えているからです。
5名の助産師を筆頭に、すべての看護スタッフがソフロロジー式分娩法を学び、病院全体でより手の届いた心配りが出来ますように心がけています。
ソフロロジー式分娩法 イメージと呼吸法による和痛分娩
−出産は育児の通過点!赤ちゃんのためのより良いお産を−
分娩台での出産を嫌われる妊婦様もおられますが、赤ちゃんのことをまず第一に考えた場合、安全性を求めた形が分娩台での仰臥位(あおむけ)の姿勢であるといわれています。そのため、様々な分娩方法をおこなった結果、当クリニックでは分娩台での出産をおこなっており、その中でも母体と赤ちゃんの両方が安全でかつより自然分娩に近いと思われたソフロロジー式分娩法を実践しています。
ソフロロジー式分娩法とは、これまでの分娩法のような陣痛という「痛み」を逃す方法だけを考える出産方法ではなく、「母性の醸成と確立」に最も重点を置いた出産法です。赤ちゃん中心の考え方であるため、陣痛という痛みだけを逃す分娩法とは異なり、妊娠中から出産や育児をイメージし、精神を安定させ、リラックスの中で出産を迎えます。そして、その出産の時には、妊婦様はお母様であるという、すでに母性が確立していることを目的としています。陣痛ということに対しては、痛みというものをあるがままに受け入れる姿勢を基本とし、「この痛みは喜びであり、赤ちゃんが産まれてくるエネルギー」という発想の転換をしていただきます。
そのため、妊娠中からのイメージトレーニングや呼吸法の練習が必要なため、妊娠後期には講習を受けていただき、呼吸法の指導などをおこないます。
実際、当クリニックでは、平成13年3月にこのソフロロジー式分娩法を導入して以来、パニック出産はほとんどなくなり出産自体がとても静かになりました。さらに、ソフロロジー式呼吸法により胎児か苦しくなることも少ないため、胎児心音不良による緊急帝王切開術はほとんどありません(緊急帝王切開率約2%以下)。
また、会陰切開をすることはほとんどありません(2〜3%)。
産道ブロック麻酔 ( 和痛分娩および無痛分娩 ) −できれば少しでも痛みを伴わないお産がしたい−
※ 費用は自費となります。詳しいことは妊婦健診時にお聞きください。
ソフロロジー式分娩法だけではなく、局所麻酔薬を用いた和痛および無痛分娩も併用することができます。
【 和痛分娩 】
吸引分娩や鉗子分娩といった機械分娩の時におこなっておりました会陰部の麻酔で、分娩における腟の痛みを緩和する方法です。
傍頸管ブロックと陰部神経ブロックがあり、針を刺す痛みはありますが、麻酔後は痛みが和らぐ効果が期待できるとともに、母体がリラックスし腟の緊張がほぐれることで分娩の進行が期待できます。
< 傍頸管ブロック >
子宮口が約5〜6cm開大した後、なかなか分娩が進行しない時に適応となります。
子宮口が開くのに伴い、腰や陰部に痛みを生じます。
傍頸管ブロックはこれらの痛みを和らげる効果が期待できます。
効果は数分であらわれ、約1時間程度でなくなります。
< 陰部神経ブロック >
子宮口が全開大(10cm)した後、腟〜会陰および外陰に力が入って産道が狭くなった時に適応となります。
赤ちゃんの頭が腟と会陰を通って出てくるときに腰やおしりから会陰部に痛みを生じます。
陰部神経ブロックはこれらの痛みを和らげる効果と分娩進行が期待できます。
効果は数分であらわれ、約1時間程度でなくなります。
会陰切開縫合時の痛みもありません。
※ これまでは、吸引分娩および鉗子分娩などに限り行っておりましたが、自費診療として適応を拡大いたしました。
※ ただし、局所麻酔(歯科などでの麻酔)でのアレルギー歴がある場合にはできません。
聖隷三方原病院産婦人科スライドより
【 無痛分娩 】
ここでいう無痛分娩とは、硬膜外麻酔(背中から針を刺します)を用い、脊髄から脳までの痛みの回路を遮断することで痛みを無くします。
手技的には、我々産婦人科でも一般的に行っておりますので可能ですが、血圧などの全身状態の管理を必要とするなど、母児に合併症を起こす危険性もあります。
そのため、当院では医学的な適応が生じた場合(母体高血圧や分娩停止など)のみに施行することはあります(年間数症例のみ)が、ご希望による無痛分娩は行っておりません。
聖隷三方原病院産婦人科スライドより
【 痛みの評価 】
FACE SCALEを用いて、痛みの評価をおこないます。
時刻 | 子宮口(cm) | 腹痛 | 腰痛 | 臀部痛 | 外陰部痛 | 傍頸管ブロック | 陰部神経ブロック | |
入院 | : | |||||||
: | 5〜6 | 3 | 4 | 1 | 1 | ○ | ||
: | 1 | 2 | 1 | 1 | ||||
: | 全開大 | 4 | 4 | 3 | 4 | ○ | ||
: | 2 | 2 | 2 | 2 | ||||
分娩 | : | |||||||
産後2時間 | : |
陣痛誘発 および 陣痛促進 について
−まだ陣痛が来ないまたは陣痛が弱い妊婦さんに対して、陣痛促進剤などを使って陣痛を起こします−
どんなときに陣痛促進剤を使うの?
< お母さん側の問題 >
・ 予定日を過ぎている場合
・ 破水しても陣痛が来ない場合
・ 母体に妊娠高血圧などの合併症を生じ、妊娠を早期に中断しなければならない場合
< 赤ちゃん側の問題 >
・ 子宮内発育遅延(子宮の環境が悪くなり発育が止まってしまった)
・ 子宮内感染
< その他 > 医学的適応はございませんが、相談の上、実施しています
・ 児頭と骨盤のサイズ違いで帝王切開となる可能性が高くなることが予測される場合 ・・・ 母体身長が150cm未満であったり、児の推定体重が3,500g以上が予想される場合など
・ 計画出産を希望された場合 ・・・ より確実にご出産に立ち会われたい方(特に遠方より里帰り)や上のお子様の預け入れなどの都合による場合など
【 陣痛誘発の方法 】
( 子宮頸管の熟化 ) 子宮口が柔らかく開きやすい状態になっていない場合は、器具(バルーン)による子宮頸管拡張をおこないます。
( 陣痛促進剤 )
・ 内服薬 ・・・ プロスタグランディンE2錠(PGE2錠)
・ 点滴 ・・・ オキシトシン点滴
いずれの薬剤における副作用として、過強陣痛、子宮破裂、胎児心音不良などがあげられますが、お母さんと赤ちゃんの状態をモニターなどで常に観察しながら行い、徐々に薬剤を増量し陣痛を強くしていきます。
骨盤位分娩の経腟分娩および胎児外回転術
当クリニックでは、十分な説明(インフォームド・コンセント)をおこなった上で、当院の適応に当てはまる場合に限り、骨盤位の患者さまにおきましても、ご希望がございましたら経腟分娩の方針で出産していただいています。
近年、帝王切開術の技術も進歩し、手術による母体死亡はほとんどないため、これらの出産には帝王切開術がおこなわれるケースが多くなりました。しかし、術後の血栓症および羊水塞栓症による母体死亡などを考慮すると帝王切開術が一番安全とは言い切れません。
確かに、単胎・頭位の分娩と比較し、赤ちゃんにとってリスクの高い出産になります。以前、訴訟大国のアメリカでは骨盤位に対し全例帝王切開術を選択していました。その影響で日本でも帝王切開術の傾向が高くなりました。しかし、医療が進んでも帝王切開術後の血栓症による母体死亡は避けることができないある一定の確立で起こりえます。また、十分な骨盤位分娩の技術をもった医師が経腟分娩を行った場合と出生児の予後は変わらなかったため、現在、アメリカでは骨盤位=帝王切開術ではなく骨盤位の経腟分娩が見直されてきています。アメリカに追従することが良いこととは言えませんが、きちんとした条件を満たしていれば、決して無理のあるお産ではなく、十分に経腟分娩をしていただけると考えています。
上記の「十分な骨盤位分娩の技術を持った医師」の判断は難しいですが、当クリニック院長は現在まで約200例程の骨盤位分娩の経験があり、その経験の中で当クリニックの経腟分娩適応を決めております。経腟分娩を希望される場合には、当クリニックの適応内で判断し、経腟分娩で出産できるかどうかを検討し分娩方法を決定いたします(たとえば、母体身長が150cm以上、胎児の推定体重が2,500g〜3,500gなど)。
リスクの高い分娩であることは間違いありませんので、分娩予約は早めに行って下さい。当院の分娩予約状況ではすべてをお受けできないことがあります。
詳しくは、外来受診時もしくは分娩予約時にお尋ねください。
※ 胎児外回転術について
当クリニックでは、骨盤位分娩も取り扱っておりますが、胎児外回転術を施行することがあります。
胎児外回転術とは、胎児の胎位異常(骨盤位など)を医師によって腹診を行い正常の胎位へ戻してあげる手技です。成功率は約90%程度で、難易度は症例によって異なります。
決して安全なものではなく、すべての方に安易に行えるわけではありません。施行する前に十分に患者さまに説明し、ご同意が得られた場合に行っています。
( 他院で妊婦健診を受診されている方の骨盤位に対しても外回転はお受けしておりますが、必ず、紹介状を持参してください )
【 分 娩 統 計 】
新病院移転後
総分娩数 5,372例 ・・・ 帝王切開術 205例 ( 約3.8% )
帝王切開術13例・・・予定帝王切開術10例(既往帝王切開術8例、子宮筋腫手術後2例)、緊急帝王切開術3例(胎児心音不良1例、分娩停止2例)
帝王切開術後経腟分娩(TOLAC)希望6例・・・成功6例(100%)
骨盤位外回転術13例(当院9例、紹介4例)・・・成功11例(84%)
【所在地】
〒 852-8126 長崎県長崎市石神町 1-19
Tel 095-845-1721